ピアノ教室のあるある話
新しい年が明けて、桜ちゃん(小2)のお母さんが、最初のレッスンの時にお手紙をくれました。
「昨年は、先生のお陰で、叱らないで一緒に練習をする、と言うことが少しでも実践できて大きな収穫でした。
しかし、どうしても娘の行動が待てずに、自分で先々の指示をして、すっかり指示待ち人間にしてしまったことを反省しております。
こちらが何も言わなければ、の〜んびり過ごしている娘を見ると、いてもたってもいられない気持ちになります。
ペースの遅いわが子ですので、ついつい口を出したくなりますが、見守っていきたいと思っております」
と言うような内容のお手紙でした。
わかる、わかる、と頷きながら読みました
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
その桜ちゃんのことで先日お母さんからお電話をいただきました。
レッスンが迫っていても全然エンジンがかからない
練習をさせていても他の出来ないところが気になって、結局あちこちつついてしまう。
昨日やったことが次の日には全部忘れている。
こんな調子では最後までたどり着かない
というものでした。
一つずつの項目に対して質問していきました。
私「それは誰がですか?」
桜母「もちろん、私です」
別の項目に対して
私「それは誰がですか?」
桜母「さくらです」
と聞いたところで、
賢い桜母さんは「先生、また私が主体でやっていますね・・・」と気づきました。
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
二人でしばらく大笑いをしたあと、
桜母さんは「でも、あの子に任せていては何一つ出来るようにならないんです」と苦しい胸の内を話してくれました。
もちろん、桜ちゃん一人では何もできないでしょう。
そこで、「質問する」ということをお勧めしてみました。
どんな返事が返ってきても、賛成して、まずその話に乗ってみる、というゲームです。
たとえば、練習計画についての質問は・・・
私がお母さん役で、お母さんに桜ちゃんの役をやってもらいます。
母「今度のレッスンでどこまで聞いてもらうことにする?」
桜「全部弾く」
母「ほぉ~~~、すごいね!頑張りましょう!」
桜「うん」
母「この曲の中で一番難しそうなところはどこかな?」
桜「ここ」
母「なるほどね。じゃぁそこから練習してみるかな?」
桜「うん」
ここまで話したところで、桜母さんから質問がありました。
桜母「先生、そうなんです。さくらは絶対全部って言うんですよ。でも無理じゃないですか・・・」
私「いいの、いいの。無理だってさくらちゃんが感じればいいの」
桜母「途中で挫折するようなことになるんじゃないですか?」
私「計画の見直しは毎日すればいいの。
数日やってみて『やっぱり2ページにする』ってさくらちゃんが言ったら、『そうだね』って計画を立て直せばいいの」
桜母「いいんですか? だったら一番難しいところが的外れな場所でもいいんですか?」
私「もちろん。さくらちゃんが思う一番難しい場所だもん」
保存
保存
保存
保存
保存
保存
そして次に練習に入ってからの質問です。
練習はなるべく短い単位で行うように提案しました。
母「この中で一番強い音はどの音かな?」
桜「この音」
母「そうだね、だったらそうなるように弾いてみる?」
桜「うん」
母「右手と左手どっちが大きい方がいいと思う?」
桜「右手」
母「じゃぁ、右手が聞こえるかどうか聞いてみる?」
桜「うん」
というように、すべて桜ちゃんに質問して、桜ちゃんに答えてもらう、と言う方法で練習をしてみることをお勧めしました。
桜母「でも先生、こんなことしていたら1時間で1小節しか進みませんよ」
私「そうだよね。でも今日は1時間で1小節進んだ、ということが分かったらすごくない?」
桜母「でもそうしたら1週間で7小節ですよ」
私「さくらちゃんにそのことを伝えてみてね。『さくらちゃん、今日はよく頑張ったね。1時間で1小節出来るようになったよ!一番最初の計画の、来週のレッスンで最後まで弾く、って言う目標はそのままでいいかな?ちょっと減らす?それとも明日からの練習時間を増やす?』って聞いてみたらいいんじゃない?」
桜母「なるほど。それもありなんですね!」
私「何でもありじゃない?」
保存
保存
保存
桜母「もしも7小節しか出来なかったとしてもそれでレッスンに行っていいんですか?」
私「もっちろん!きっとその7小節は私にほめられると思います。
そして、私は『この調子でいくと発表会までにこの曲仕上がるかな?いつまでにバッチリ弾けるようになっていたい?』って新たな質問をすると思います。その時にさくらちゃんは、仕上がりのゴールを自分で決めるわけだから、スピードアップが必要かどうかわかるんじゃないの?」
桜母「なるほど・・・。これも質問ですか・・・・」
桜母さんは、これまでも質問はしていたけど、無意識に答えを決めていたし、答え以外の返答が出来ない雰囲気をかもしだしていた、と話してくれました。
桜母「それでは質問にも自由選択にもなってないですね。
しかも目標を変更するなんて選択肢、全然考えてもいませんでした。
むしろ一度口から出した言葉は責任を持って実行しなさい、と説教していたと思います」
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
私「自分の言葉に責任を持つ、って大事だよね。でも多分まだよくわからないんだと思う。
『よく考えてからお返事しないといけないんだな』って、いろんな経験を通してまず本人が気づくことが大事じゃない?」
桜母「なんかわかった気がします。あ~~~そうだったんですね!また間違いを犯すところでした」
私「こうやって母親業をやっていると、娘たちをしっかり育てなきゃ、って大きな責任感を感じていたけど、いやいや違う、問題は私だったか・・・と思うことばかりだよね」
桜母「いやぁ~まだまだでした」
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
保存
問いかける、というのは時間がかかります。
もしも、こちらが一押しだと思っている答えではないものを子どもたちが選択した場合、回り道になるかもしれません。
でも、一緒に回ってみようではありませんか?
思いがけない発見があるかもしれません。
質問も子どもが自分で答えを導き出せるような問いかけが出来るといいですね。
ここは私たち指導者やお母さんの腕の見せ所でもあります。
問いかけるという一手間をかけることで、子どもが本当の意味での選択肢を得て、自分で考える習慣を作る事が出来る、と実感しています。
桜母さん、頑張れ!