明子ちゃん(小4)は反抗期。
なかなか素直に親のいうことが聞けません。
そして思っていることもうまく口に出せず、「あ~~これをやったら余計にお母さんの神経を逆なでするのに・・・」というようなことを、我慢できずにやってしまったりします。
ある日のレッスンのこと。
先週注意されたことと同じところをまた注意されてしまいました。
その時の明子ちゃんの表情は「あ~~またダメだった」という落胆の表情でしたが、その後は頑張って挽回し、「ありがとうございました」ときちんとご挨拶をしてレッスンを終えました。
お母さんがすごく残念そうにしていたので、「惜しかったね・・・」と声をかけたところ・・・
明子母「もう、毎日のように言ってるんですけど、全然だめですね。私が言うと『出来てる』って言い張るし、不機嫌になって『もうやる気がなくなった』って悪態をつくし、一体どうしたらいいんでしょうか」
私「そうなんだ。明ちゃん、出来てるって思ってたけど出来てたかな?」
明子「・・・・・」(首を振る)
私「今日どうしてまた間違ったかわかったから、今度は出来るかな・・・」
明子「はい」
明子母「もう私が口出ししない方がいいんですかね。言うと喧嘩になるし、でも言わないと全部忘れて好きなように練習するんですよ」
私「そうだね・・・。毎日のように言っても忘れてるんだもんね。やめてみる?明ちゃん、そうしてみようか・・・」
明子「・・・・」(首を振る)
私「あら、どうして?お母さんに言われると腹が立つんでしょ?」
明子「・・・・」
明子母「私の言い方が悪いんでしょうね・・・。もう聞いていたらイライラして、我慢の限界が来てから言ってしまうので、いつも怒っています」
私「そうなんだ。お母さん、今いいことに気がついたね。そこまで待たずに言ってみる??(笑)」
明子母「そうですね・・・。まだ精神的に余裕のあるうちに(笑)」
明子ちゃんのお母さんの柔軟な考え方に感心しながら、ふと娘たちとの出来事を思いだしました。
娘たちがまだ小学生だった頃、私以外の先生の特別レッスンを受ける機会がありました。
当然、我が家にも同じような修羅場や口喧嘩があり、やっぱりレッスンでも似たようなことが起こりました。
先生「これは前回にも言いましたよ。まだ直ってない!こんなんじゃちゃんと弾けませんよ!!」
次女「・・・・」
先生「重野先生、前にも言いましたよね。ここは大事なところなんです。ここをちゃんと直さないとこの先をやっても意味がないんです!」
私「すみません。私もいつも娘に言っているんですけど・・・・」
そんなやり取りをしてレッスンを終え、帰りの車の中で・・・
私「ほら、お母さんのいうことを聞かないから、また同じこと言われたじゃん」
次女「そんなん聞いてないもん」
長女「お母さん、言ってなかったじゃん」
私「え??うそでしょ?毎日言ってるじゃん。覚えてないの??」
長女「覚えてない」
次女「知らん・・・」
なんじゃそれは。。。。
なんなの、あの日々の修羅場は???
と思うものの、こうもあっさり聞いてないといわれたらこちらも作戦を変えなければいけません。
悔しいので、紙に書いたりして毎日言ったことの証拠を残すようにしたり、さらに印象に残るように「本日の目標」とか「今日のひとこと(ひとことでは済まないのですが・・・)」とか大きく書いて見せるように努力してみました。
そしてまた忘れた頃に特別レッスンがあり、注意される内容は違いましたが、またもやどこかで聞いたようなやり取りが・・・
先生「ここは音を切ってって前にも言ったよね?」
次女「・・・・・」
先生「重野先生、そうですよね・・」
私「すみません。私が本人にわかるようにうまく伝えられてなくて・・・」
先生「いやいや、先生のせいじゃないですよ。自分でちゃんと覚えて意識して練習しないと!」
私「その点も含めて私も反省しています。申し訳ありません」
そんなやり取りをして、帰りの車の中・・・
次女「お母さん、どうして謝ったの?お母さんは悪くないじゃん。ちゃんと注意してくれてたじゃん。」
私「結果的に出来てなかったら、同じことだよ。うまく伝えられてなかった、だから意識して練習が出来てなかったってことだからお母さんにも責任はあるよ」
次女「でも、それをちゃんと聞かなかったのは私なのに・・・」
私「お母さんもちゃんと毎回出来ているかどうかの確認してなかったしね・・・」
次女「(しばらく黙って・・)お母さん、本当にごめんね・・・」
似たような現実だったにもかかわらず、この会話の違いは何だろう・・・
最初のやり取りは、私自身が先生に身の潔白を証明したくて「私はちゃんと娘たちに言っているんです」とわかってほしかったのでしょう。
思わず自分を守ってしまった私の心を娘たちが感じ、反抗したのだと思います。
うまく弾けていない罪を全部娘たちになすりつけて、自分の身を守るというダメ母な私。
2回目は狙ってやったわけでも考えてやったわけでもなく、身の潔白を力説したところで出来てないことには違いないんだ・・・と思った心から出た素直な気持ちです。
やっぱり原因は私だったのか・・・と気づいた出来事でもありました。
そしてその私の姿を見て、素直に反省して謝る娘に驚きました。
この昔話を明子ちゃんとお母さんにした後の会話です。
明子母「あ~~私は母親ではなく先生になっていました。しかもすごく言い方のきつい、怖い先生でした(笑)」
私「言い方ってあるよね・・・。相手が聞く気持ちが起こるような言い方をしたいよね」
明子母「しかも、ピアノが弾けもしない私に、上から目線で言われたくないですよね・・・」
私「お母さんがピアノが弾けても弾けなくても、言われたら嫌かも・・・。私もこどもの頃すごく嫌だったから・・・」
明子母「そうですよね・・・そうなんですよね・・・」
この話、明子ちゃん親子だけでなく、いろんな場面でよく登場します。
どこのご家庭にもある話なんだと思うし、みんなが抱える共通の悩みですね。
頭ではわかっていても、本能的にすぐ保身に回ってしまう自分が存在することをしっかり認めつつ、言葉を選びたいものです。