ピアノ教室のあるある話
翔子ちゃん(小3)は一人っ子です。
翔子母「うちの子は一人っ子で競争心がなくてのんびりしているので、いつもスタートから出遅れていますよね」
私「一人っ子の生徒さんは結構多いね。でもみんなそれぞれじゃないかな・・・。一人っ子でも、親にも負けたくない負けず嫌いの子もいるし、社会性が強い子もいるよ」
翔子母「翔子はマイペースで、ぜんぜん焦ったりもないし・・・負けたくないって気持ちもないみたいなんです」
私「それって素晴らしいことじゃないの?」
私は、一人っ子のメリットはたくさんある・・・と思っています。
葵ちゃん(小5)は3人姉妹の真ん中です。
3人ともピアノを習っています。
葵母「なかなか一人一人をきちんと見ることが出来なくて、手薄になってしまい申し訳ないです」
私「そうかなぁ・・・。3人とも楽しそうにピアノを弾いてくれて、みんな素晴らしいよ」
葵母「3人もいるので、それぞれの練習時間が恥ずかしいくらいに短くて・・」
私「そうなんだね。でも、ピアノの前に座っている時だけが練習時間じゃないから、待ち時間も楽しんでみたら?」
今、3人兄弟(姉妹)でレッスンに来てくれている家族が、3家族。
みんなで仲良く通って来てくれていることが私の誇りです。
佳子ちゃん(小2)は、電子ピアノで練習しています。
住宅事情で家にアコースティックの楽器が置けないからです。
佳子母「家にアップライトでもあればいいのですが・・・すみません」
私「大丈夫ですよ。レッスンの時とお家で練習するとき、何が同じで何が違うか、佳子ちゃんがしっかり観察力を働かせてくれているから、レッスンが成り立ってます。」
佳子母「時々、佳子に『家で出来ても先生のところで全然出来ん!』と文句を言われます」
私「それはすごいね~~。よくわかってるんだね。お母さんが出来ることは何かありますか?」
佳子母「週末は楽器店に行ってグランドピアノをお借りしています」
私「それは素晴らしいと思います。最大のサポートだよね!」
私は普段のレッスンでは、電子ピアノの人もアップライトの人もグランドピアノの人も、同じようにレッスンします。
その環境だから出来ること、わかることもたくさんある・・・と思っています。
確かに、翔子ちゃんも、葵ちゃんも、佳子ちゃんも、デメリットに目を向けて考えたら「うまくいかない理由」はたくさんあります。
でも、私には「家にグランドピアノがあり、康介君しかピアノを弾かない」という恵まれた環境にある康介君のママが「うちの子、5分しか練習しないんです」と嘆くのも、同じように聞こえます(笑)
一概に同じとは言えませんが、「うまくいかない理由」には、なんとか対策が立てられそうなものがあり、受け止め方によってはうまくいきそうなことがあり、私にはお母さん方のつぶやきは同じように聞こえてくるのです。
私は「5分しか練習しなくて、めっちゃかっこいい曲が弾けるようになったらすごくない?」「電子ピアノしかお家にない佳子ちゃんがコンクールの全国大会に行ったらすごくない?」と本気で思っています。
そして、康介君にも佳子ちゃんにも「先生のこの目標を達成するには、みんなの協力が必要なの。一緒に頑張ってくれる?」とお願いしています。
一人っ子でも兄弟が多くても、電子ピアノでも、練習嫌いでも・・・。
続けていく道を探し、可能性を探り、諦めずに目の前の壁(高かったり低かったり厚くしたり薄くしたり調整しながら、などなど)をその都度、乗り越えて行くと・・・。
ふと気がついて振り返ったら、びっくりするようなことを成し遂げている生徒がたくさんいるのです。
同じものを見ても「〇〇だから無理」と思うか、「これで出来たらすごい自信になるかも!」と思うかで、取り組み方が全く変わりますよね!?
うちの娘は二人ともマムシ指でした。
二人ともピアノを始めたのが遅く、それでなくても焦りがある上にマムシ指・・・。
どうしても直したくて、あれこれ考え、いろんなものを試しました。
一時的に直っても、曲の中ではすっかり忘れてしまう。
口うるさく言うと、ピアノに向かうことも嫌になって無表情な演奏になり、何のためにマムシ指を直しているのかわからなくなりました。
こんなことでは、近い将来ピアノが弾けなくなる日が来るのではないか・・・。
と、当時の私は「マムシ指を直さないと、ピアノはうまく弾けない」と思い込んでいたんだと思います。
そんな時にテレビのクラシック番組で、外国人の男女ピアニストが連弾を弾いている番組を見ました。
その女性ピアニストは、それはもう画面からもはっきりわかるようなマムシ指でした
それを見て「あ、マムシ指でもピアニストになれるんだ・・・(ピアノは十分弾けるんだ)」と、憑きものが落ちた感覚に陥ったことを思い出します。
「うまくいかない原因」は、私の<思い込み>でした。
こんな当たり前のことがわからなくなるなんて・・・。
<思い込み>に取りつかれるって本当に怖い・・・。
「マムシ指でもピアノが弾けるってすごくない?それを二人の「売り」にしようよ!」
・・・と言ったら、娘たちに速攻却下されましたけど(笑)
娘たちはマムシ指とうまく付き合いながら、時に克服しながら、今もピアノを弾いています。
お母さん方にはよくこの話をします。
欠点を克服するのには時間がかかります。
でも、それと同じだけかそれ以上の素晴らしい素質が、こどもたちにはあります。
まずはそこを見つけて思いっきり伸ばして輝かせ、自信をつけて、本人の覚悟が出来たら、水面下で少しずつ欠点を克服していく・・・というコースも悪くないと思います。
みんなにそれぞれある「うまくいかない理由(わけ)」には、水面下に隠れている「元凶」があるのではないでしょうか。
私の場合はそれが「マムシ指だとピアノは上手にならない」という<思い込み>でした。
どんな状態になっても、そのたびに目標を軌道修正して続けてみましょう。
続けていくうちに、水面下にある「元凶」に気づけるかもしれません。
それが将来の大きな自信につながります。
母親という生き物は、子供の成長をこの目でしっかり確かめたくて、今か今かと首を長くして結果が出るのを待っていますが、背が伸びるのと一緒で、成長はなかなか目に見えません。
お母さん方には・・・
「見守り隊として、焦らず一緒に頑張りましょう。
そして、どんな成長を見せてくれるのか楽しみに一緒に待ちましょう!」
・・・と話しています。