突然の出来事が次々と起きて、これまでの生活が一変した2020年の3月。

そのことは、その生活の変化に翻弄されながらも、いろんなことを考える機会になりました。

当たり前のように集まっていた仲間、たくさんのセミナーを受けて充実した楽しい毎日。

生徒たちと顔を合わせながらにぎやかにレッスンをして、弾きあい会をして、コンサートに出かけ、時間が空けば、趣味のプロ野球やバレーボール観戦に興じ…。

と、スケジュールをやりくりして、あちこち飛び回っていた充実した日々は、突然、スケジュール表からすべての予定が消えていきました。

子どもたちが楽しみにしていたコンサートも、目標にしていたコンクールも中止になり…。

レッスンも色々な変更をせざるを得なくなりました。

生徒たちも2月末に突然、休校が言い渡されてしまい、当たり前のように思っていた生活と、エネルギーの行き場を失ってしまいました。

お母さん方も戸惑い、途方に暮れている状態。
なので、3月1日の日曜日、生徒たち全員に向けて「一度zoomで繋がってみませんか?」と声をかけました。

画面にみんなの顔が映って歓声が上がり、「簡単に出来た」「ここで会える!」と喜ぶ子供たちを見て「よし、明日から毎朝集まろう、みんなで繋がろう!」と即決したのです。

そして、3月2日からレッスンとは別に、毎朝の「オンライン・ソルフェージュクラス」が始まりました。

小学校1年生から高校生まで、同じ時間を過ごす60分。

やっていたのはソルフェージュでしたが、みんなで集まることが目的で、勉強は二の次です。

「みんなで集まって一緒にワイワイ遊べばいいかな」

…と思っていたし、毎日が大変であろうお母さん方に「私がみんなを預かるから、1時間ゆっくりお茶でも飲んでね」という気持ちでした。

春休みが終わるまで、と思って続けていたソルフェージュクラスでしたが、1週間だけ学校があった4月をはさんで、再び学校が休校になり…結局12週間、続きました。

なんと、月曜日から金曜日まで、回を重ねること56回!

すっかり家族同様の付き合いになった生徒たち。
レッスンも含めると、多い生徒とは一日に何回も画面上で会うことになりました(笑)

最初は何もできなかった生徒たちも、最後は音大受験レベルの楽典がわかるようになって、「毎日、続けること」の威力を痛感しました。

そして「仲間」の力の強さも。

生徒たちの「知りたい」「わかるようになりたい」という思いがどんどんふくらんで、着々と知識を積み、わかるようになった時の笑顔は、私をめちゃくちゃ幸せにしてくれました。

ピアノのレッスンの時に「ソルフェージュの、ここがわからない」と質問してくれる生徒もいて、「わからなくてもいいんだよ。明日もまたおなじところを説明するから」って言ったら、「わかりたいの。わかるようになりたいの」という返事が返ってきたことも。

あまりにもかわいくて、画面の向こうの生徒を抱きしめたくなるような瞬間がありました。

さすがデジタル時代の生徒たち。

親がそばにいなくても、自分たちだけでセッティングも何でも出来て、自分たちで考え、わからないことは「わからない」と言えるようになって。

いつまでたってもアナログな私に、画面を操作するやり方を教えてくれることもありました(笑)

素晴らしい生徒たちと、ただただ一緒に時間を過ごしただけの60分。

生徒たちから一番エネルギーをもらって元気になったのは、私の方でしたね。

お母さん方からも、コメントをいただきました。

今日は在宅勤務だったので、私は一緒に参加することが出来ませんでしたが、聞こえてくる声に、zoomのソルフェージュが毎日、続く訳がわかりました!

重野先生の、

「すごーぃ」

「えらい」

「素晴らしい」

が何度も何度も聞こえて来て。

子どもたちは、たくさんほめていただいて、聞いていた私まで先生の言葉でうれしくなりました。

楽しいし、うれしいし、できるようになった上にほめてもらえる…。
それが「zoomのソルフェージュの成功の秘訣だ」と思いました。

人いちばい、苦手意識が強かったソルフェージュ。
「自分はこういうことは不得意だからできない」と思っていた事が、日に日にできるようになり、ありがたかったです。

おかげさまで、音大に進学する可能性が薄いうちの子達でも「増4度」とか、すまして答えられるまでに成長しました。

おバカな回答を連発しても、先生は「そうそう、惜しい!」…と、わかるまで何度も説明してくださって、存分に学ぶことができました。

また、みんなのつまづきや気付きにヒントを得ることもあって、グループで学ぶメリットを強く感じました。

ご多忙の中、毎日お時間を割いて、様々なこども達に手を変え品を変えて飽きさせずに楽しく教えていただいたこと、感謝の気持ちでいっぱいです。

この休校のなかで毎日、集まれる仲間がいる…と言う事に、精神的にどれだけ助けられたかわかりません。

あまり会った事のないお友達でさえも、もはや勝手に親戚のように感じています。
みんなで一堂に会える日が来るのが、とても楽しみになりました。

5月のゴールデンウィークから、もう一つ試してみたことがあります。

「ソルフェージュの後の2時間、それぞれのお家で一緒に練習する、ただしミュートで」、というzoom練習室を開いたのです。

図書館で勉強するつもりで、一緒に2時間を過ごす。

「ビデオをオンにしておくこと」だけが条件で、休憩をしても何をしても誰にもとがめられず、終わったらめちゃめちゃ私に褒められる時間。

レッスンの時ではなく、練習の時にいろんな疑問が出てくることもあるので、質問がある人はチャットに書き込んでもらいます。

そうしたら、その人を「ブレークアウト・セッションルーム」に呼んで質問を聞き、解決してから、また練習室に戻る…。

そんなzoomの使い方も知りました。

1人だと集中力がすぐ切れたり、ピアノの前から離れそうになるけれど、ちらっと横を向いたらみんなが練習している姿が見えて、弱気の虫がおさまることもあります。

そして、レッスンで椅子の高さや姿勢を注意されても、家に帰ったらすっかり忘れたり、わからなくなることもあります。

「自分の部屋で、自分のピアノで調整することは有効だな」と思いました。

何よりも生徒の一生懸命な姿を見ることが出来て…。
「こんなに頑張ってるんだな」「2時間も続けてえらいな」という気持ちになり、この練習時間中は私も「先生」ではなくて、生徒の同志・仲間でした。

6月に入った今では学校が始まり、レッスンも元通りの時間に戻りました。

今、ソルフェージュクラスは「毎週土曜日」にやっています。

zoom練習室は、今でも毎日ずっと開いています。
休校期間中と違って毎日が暑いし、疲れもあり、学校から帰っての2時間は、集中力を保つのもなかなか大変そうですが、生徒たちのそういう姿を見るのも愛おしいです。

私に頑張っている姿を見せてくれる生徒たちが、かわいくて仕方がありません。

コロナのお陰で、生徒たちも私もたくさんの時間を共有できるようになり、すっかり密な関係になりました。
お母さん方とのzoomお茶会もすごく楽しくて、続編を考えているところです。

これからも楽しんで「密な関係」を続けて行きたいと思っています。